惑星インフルエンザ

惑星インフルエンザ(7)

振り出しに戻るの巻

ーこれまでの話ー

外見はまったく似ていない双子の姉妹リリコとリリカ。

平凡に暮らしていた二人の人生が変わったのは、会ったこともない叔父の遺産数千億円を相続してからだった。

莫大な財産を手にした二人は、ホテルのアッパーフロアを借りきって暮らしている。

しばらくは遊び呆けていたが、やがてそんな生活にも飽きてきた二人。

「そうだ、小説を書こう。」

それ以来、自称小説家のりリコと自称マネージャーのリリカの地味な日常が始まる。

リリコは長年温めてきた童話「惑星インフルエンザ」の執筆にとりかかるが、うまく書けずに悩んでいる、ということもないようだ。

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「あーあ、ダメだ、こりゃ・・・。」

リリコは大きく伸びをした。

「なに煮詰まってんの?」

脇を通りかかったリリカが、覗き込んだ。

「いやもう、なんていうか書いてる自分からしてまったく面白くないんだわ。」

「ああ、やっぱり。」

あっさり言われて、リリコは鼻をふくらませた。

「プレッシャーかけてもと思って言わなかったけど、ホント呆れるほど面白くないもん。」

「話が面白くなさすぎてかえって笑えるとかそういうレベルでもなくて、とにかくしんしんと冷えるように面白くないというか、凍てついたツンドラの大地にひとり立ちつくすような寂寥感というか・・・」

「もういい、いろいろ表現するな!」

「まあ、わからんでもないが・・・。てか、最初の予定では少なくとも『長くつしたのピピ』だけは超えられると思ってたんだけどな。」

「あんた、それが甘いんだよ。」

「あたしもね、『長くつしたのピピ』ってのは大して面白いと思わなかったんだけど、最初のキャラ設定とかがいいんじゃないの、靴下とか鞄とか船乗りのお父さんとか・・・。」

え、そんな話だったっけと思い返しているリリコを尻目に、リリカはなおも畳み掛けるのだった。

「だいたいさあ、『ロードバブリング』と『スターヲズ』と『ドラゴボール』を足して3で割ったのっていう構想からして、虫がよすぎっていうか、甘すぎるよ。ローマは1日にして成らず。学問に王道なし。」

「4で割るんだって。ちょっと薄めなんだよ。しかも『シベ超』の要素も入れてって言ったような・・・。」

「ところで、なんでそれに『ハリポタ』が入ってないのよ?」

「私嫌いだもん、あの話。だいいちラドクリフが好きになれん。ハーマイオニが可哀想だ。」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・。」

                       つづく

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惑星インフルエンザ(6)

ふ し ぎ な メ ニュ ー

australia4 指定されたテーブルに着いたものの、そのまま放置されて10分ほど経過していた。

二人がもう出ようかと席を立ちかけた時だった。

どこから現れたのか目の前にくだんの鳥男が立っていた。

デイタイムは限定メニューですのよ。」

鳥男は、二つ折りのメニューを差し出した。

手描きらしきメニューは左右に分かれていて、左側には「ふつうのメニュー」、右側には「とくべつなメニュー」とあった。

セイジは「とくべつなメニュー」に目をとめた。

そこには奇妙な言葉が書かれていた。

  1.ふりそそぐダイアモンド・ダスト

  2.ムゲンのじきあらし(オマケつき)

  3.はてしなきコズミック・ストーム

                       つづく

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惑星インフルエンザ(5)

アメリさんの話はまだまだ続く

harbor とりあえず、セイジを当時住んでいたメリーランドの家に連れて帰って一週間ほど経ったとき、またコースト・ガードから連絡があった。

なんでも、リカたちが遊覧飛行で乗った小型機SuperNova号の翼の一部が、バミューダ海域で発見されたとのこと。

それを聞いた時は、さすがにショックだったっけ。

なにしろ、バミューダ海域といえば、魔の三角海域

メタンガスの引火による空中爆発とか、当時はいろいろ言われたけど結局それで捜索は打ち切りっていうこと。

だけど、私はリカ夫婦が死んだとは思ってないんだ。

あいつらは、どこかの無人島で連絡がとれないまま、それなりにお気楽にやってるに違いない。

少なくとも、リカはね。

あいつがそんなに簡単にくたばっちまうわけないって。

セイジのことは気がかりだろうけど、案外このアメリさんがしっかり面倒見てくれてる・・・ぐらい勝手に思ってるかも(笑)。

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注)文中に出てくる地名や団体名は実在のものとは何ら関係がありませんし、使用している写真もあくまでイメージです。

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惑星インフルエンザ(4)

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アメリさんの話


コースト・ガードから電話があった時は、本当に驚いた。

何十年も会っていない姉のリカが、こっちで遭難して行方不明なんて突然聞いたんだからびっくりするわね、そりゃ。

なにしろ、リカが5歳であたしが4歳の時に別れたきりなんだから。

ケイジっていう人と結婚して男の子を産んだっていうことは聞いてたけどね。

なんであれ、旅行先で小さな子供を預けてケープ・コッド(注)から遊覧飛行に飛び立ったなんて、まったくあきれ果てた。

ホテルの託児室に預けられてたセイジは、コースト・ガードに保護されてチャイルドケアセンターに移されてるって言うし。

リカ夫婦の身勝手さには頭にきたけど、センターに行ってセイジを見たときは思わず噴出しそうになった。

その時セイジはちょうど5歳だったんだけど、別れた時のリカにあまりにも似てたから。

同じ年でヘアスタイルもレイヤーだし、考えてみればリカはスカート嫌いでいつもつなぎのパンツをはいてたっけ。

で、両親が行方不明というのにセンターのおもちゃで夢中になって遊んでるのを見たら、

まんま・リカと言ってもいいくらいだった(笑)。

            つづく

(注)ケープ・コッド
   ボストンから車で1時間程の岬。
   大西洋に突き出した、長さ105kmほどの釣針型の半島。
   清教徒が初めて北米大陸に足を踏み入れた場所として有名。

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惑星インフルエンザ(3)

セイジの話

アメリさんと初めて会ったのはだいぶん前のことだった。

いつだったかははっきりしないけど、その時のことは今でもよく覚えてる。

旅先で、父さん母さんがいなくなって大騒ぎになった時だ。

一晩知らない人の家に泊められて、次の日その家の子供二人と遊んでたんだ。

ゲーム機を3人で夢中になって奪い合ってたら、うしろで声がした。

セイジはどの子?」

ふり向いたら、すごく大きな女の人が立っていた。

「あんたがセイジね。これは、これは・・・・、お母さんによく似てるわ」

母さんに似てると言われたのは、初めてだった。

                               つづく

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惑星インフルエンザ(2)

   鳥 人 男

店の中に足を踏み入れた途端、あちこちから甲高い叫び声が聞こえてきた。

  「ミラクー!」  「ミ・ラクー!」  「ミ・ラコー!」  ・・・・・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

声はどうやら壁や天井のスピーカーからのようだった。

あっけにとられている二人の目の前に、どこから現れたのか、奇妙ないでたちの男が立っていた。

タイツのようにも見える派手な青色のパンツの上には、てろっとした白いブラウスにぴっちりのヴェスト。

ヴェストの胸の部分は、色とりどりの鳥の羽で出来ている。

かわせみのくちばしをおもわせる尖った鼻の男は、目のところにこれも鳥の羽でつくったマスクをしていた。

セイジは前の年にアメリさんと観た鳥人サーカスのMCの男を思い浮かべた。


  「ミー・ラク-ッ!! ようこそプラネット・フルーへ

鳥人男は、大げさな口調で言った。

ぴょこぴょこ飛びはねるように歩く男に通路を経て案内された場所には、中央に目立って大きなスライダーが見える。

壁際にボックス席がいくつかあったが、スライダーとの間には魚網のようなものが張りめぐらされていて

周囲を暗くしていた。

鳥人男のほかには人影もなく、どうやら客はセイジとアメリさんだけのようだった。

                                                     つづく

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惑星インフルエンザ(はじまり)

     ミラクル・ネット・カフェ


その店は、商店街から少し離れた通りに建っていた。

岩盤風に造られた扉の上方には、虹色の電飾で「the Planet Flu」の文字があり、

その周りには土星やら太陽やらUFOやらが所狭しと配置されていた。

ゲームセンターのようにも見えたが、電飾で飛び交うUFOには小さく「miracle net cafe」と書かれていた。

   「ちょっと、見てみ!」

アメリさんが扉の横の木製の立て札を指さした。

   「11歳以下の方はお断り

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   「ってことは、いいんだよね」 

セイジは、得意そうにアメリさんを見上げた。この3月に12歳になったばかりである。

アメリさんはとても背が高くて、イッセイさんからはよく「大女・アメリ」と言われていた。

   「おもしろそうやん、入ってみよ

扉の前のカーペットの上に立った途端、派手な音をたてながら二人の前で扉が開いた。


                                                つづく

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